縦横に碁盤の目のように、道が続いている。
まっすぐ歩いているつもりでも、
人は常に曲がり、選んでいる。
交差点に立っただけでは
その周りの辺に進入したことにはならないが、
同じ交差点を他の線と共有することはできない。
「お前はねこ組か?
それともうし組か?」
まただ。これで何度目だ。
会う奴会う奴、俺がねこ組かうし組か訊いてくる。
そんなことを訊いてどうする?
「ねこ組ならば、こっちへ来い。
うし組ならば、たたき切る!」
どっちでもないと言ったら?
「そんな奴はこの学校にはいない」
それはどうかな?
「お前、もしかして………魔王?」
魔王がどうした?
「く、来るな! 見逃してくれ!!
俺がここへ来たのは、なかったことにしてくれ」
無事に戻りたいなら止まれ。
安心しろ。何もしない。
お前は何をしてるんだ?
「見りゃわかるだろ?味方を探し出し、敵を倒す!」
街区に書かれた数字は、倒した屍の数でもあるのか。
「そうだ。……手をつないだ仲間の数ともいう」
怖くはないのか?
「ないね。みんなそうだよ。
ここではうし組かねこ組。
どっちにもなびかないのは、魔王とアン・ズルニだって」
アン・ズルニ? そいつは誰だ?
「俺も会ったことがない。
噂でしかきいたことはない。
ホントにいるのかさえ、あやしい。
……ただ、魔王もここにいるからな…」
そいつはいい奴なのか?悪い奴なのか?
「知らないよ。そんなのきいてどうする?」
どうするって、道を歩く楽しみが1つ増える。
「歩いてると『あんた誰?』って呼び止められるんだ。
餡がただれてる、皮が餡に負けちゃってるんだ。
で、皮がないからアンは毛皮を着てるってね。
毛皮を着たねえちゃん、そいつがアン・ズルニだって」
ふふふ、そうか。
「何もしないのか?」
ゆっくり楽しませてもらうぜ…
「う、うわぁっ!!
魔王が、魔王が来たぞーー!!……」
7) こびとさんの真実 につづく 「アン・ズルニを呼ばない」表紙に戻る