小雨の中を 僕らは旅してた。
風の力を借りて 吹かれるままに、
すごいスピードで車道を走ってた。
「ごめんなさい」と言いながら、
横切る車の間をすり抜けた。
敵の銃弾をかわすみたいに。
父も母も 待ってはくれなかった。
目の前でホームドアが閉まり、
母は先に行ってしまった。
僕には ICカードと 風に吹かれるボディと
二本の脚があれば、それで十分だった。
気づくと弟がいなかった。
だが気にしてる場合ではなかった。
「誰か一人が 生き残ればいい」
そう教えられて育ってきた。
「私を見て」
ところで君は、誰なんだ?