魔王は生徒たちをつかまえて事情を聴くことにした。
……し、静かに。
怖がらないで、大丈夫だから。
君たちこの学校がどうしてこんなになってしまったのか、
いきさつを話してくれないか?
………話してよ。同じ生徒同士じゃないか!
「そもそもの始まりは、
この地域が過疎地だという理由で、
2学級に減らされたことからだった。
ところが蓋を開けてみたところ、
2学級に150人詰め込まれてしまった。
〜これって過疎地じゃなくて過措置だ!!〜」
「劣悪な労働条件、不十分な設備と、たくさんの生徒。
その厳しさにたえかねて、先生も次々と辞めていってしまった。
『この子たちには十分な広さと高さが必要です』
そう訴えた先生も、いつしかどこかへ行ってしまった」
「僕たち、先生がすぐ辞めちゃうから勉強できないんです!!」
「あれ?魔王ってあの時の先生に何か似てないか?」
…俺に似た教師がいたのか、
そりゃまた気の毒に。
〜なかなか鋭いな〜
「あれ、おまえ、出席簿に名前載ってたっけ?」
ずっと休んでたからさ、
呼ばれてないけど載ってるはずだよ
〜載ってるよ。間違いなく載ってる。
一番上にね〜
「解決策と称して、学園長は、
学校を企業に売ろうとしている。
吉野家(よしのけ)か、マクドナル堂か。
そこから元々折り合いの悪かった
うし組ねこ組の抗争が激化した」
「吉野家だ。お前らうしは、
バラ肉にして、鍋で煮て食ってやる!」
「絶対、マクドナル堂。
お前らネコはひき肉になってしまえ―――」
俺はどっちとつるむつもりもないし、
ケンカしたい奴は勝手にしろ。
学校が何だって?知らねえよ。
ただ1つだけ言っておく。
俺はアン・ズルニと逢った。
アン・ズルニはお前らの敵ではない。
彼女はお前たちが来るのを待っている。
決して逃げないとも言っていた。
「アン・ズルニと逢ったことない」
ってどういうことだ?
彼女はすぐそこにいる。
一度逢ってみるといい。
11) 再び病室で につづく 「アン・ズルニを呼ばない」表紙に戻る