「原発」よりつづく 赤ネコ:夢の中で俺は、体を横にして、胸の高さぐらいを走行してる。 空を飛んでるのではない。 空中を移動してる。でも屋内なんだ。 畳の間が続いてて、人が寝てる。 1部屋に2、3人ずつぐらい。 こっちは高度1mか2mを、静かに通り過ぎて行く。 寝ている人たちも静かだ。 頭の上を通るのは失礼かなと思って、足元の方を飛んだりする。 だが廊下は反対の左側だから、またそっちへ戻らなければならない。 そんな部屋を、家を、いくつもいくつも通ってく… わかっていること。 帰る途中なんだ… 途中で気がついた。 実は寝てるように見えた人たちは、皆死んでいたのではないか? あれ? でも寝てる人たちから見ると、俺の方が空飛ぶ霊なのか? わからない。 目が醒めるにつれ、確信した。 『俺のDNAには、被災の記憶が入ってる。』 俺だけではあるまい。 美しく、儚く、実り豊かなこの列島に住む人たちは、 遠い昔から、崩落と再建を繰り返してきたのだ。 今こうして走ってるのは、夢なのか。それとも現実なのか。 ここは外なのか。屋内なのか。 俺はまだ生きてるのか。それとも… 帰る途中なんだ…帰る…どこへ帰るんだ? そうだそうだ、今日は神宮で、アープとスペローズの試合があるんだ。 今から行けばスタメン発表には間に合う。 天気は大丈夫か? 神宮は雨だ。 空の色も曇ってる… ♪ 雨 神宮 雨 神宮 なんて美しい 響きだ 道を失くした 俺たちが 光を見出す スタジアム こんな愚かで 欲張りな ロクでもない 俺でも 帰る場所は ここにあるさ 恐れることはない 「ゴール」へつづく |